移住者紹介

IMMIGRANT

波にのるように。「先を決めない」旅で行き着いた、なだらかな移住物語。

波田野 竜太郎さん・瑞季さん

千葉県南房総から出発した7ヶ月もの車旅を経て、高鍋町に巡り会った波田野さん夫婦。サーフィンとブラジリアン柔術に傾倒し、「今も人生の旅の途中」と語るエネルギッシュな竜太郎さんと、自然と溶け合う穏やかな愛犬・愛猫たちとの暮らしを愛する瑞季さん。ふたりの移住ストーリーを伺いました。

正反対のふたりの歩調が合う場所。

― サーフトリップが宮崎県を訪れたきっかけだそうですが、その中でもなぜ高鍋を選ばれたのでしょうか?

竜太郎さん:最初は一箇所にとどまることなく、毎日心赴くままに県内のあちこちへ車を走らせていたのですが、高鍋町の西に位置する西都市在住の友人宅に滞在していた時、最寄りの海(高鍋の蚊口浜)へ行ってみることに。すると、僕が乗るロングボードに蚊口浜のメロウで穏やかな波がぴったりと合い、すっかり気に入りまして。それから通いつめるうちに顔なじみの仲間ができて、僕らのことを気にかけてくれるようになり、それこそ“波”にのるように自然な流れで定住を決めました。

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― 高鍋のお気に入りポイントはやっぱり「海」でしょうか。
 瑞季さんはサーフィンをされないそうですが、いかがですか?

瑞季さん:わたしも海で過ごす時間が好きなので、そこは大きな魅力です。でも一番のお気に入りは、街と自然のバランスがちょうど良く、“日々の緩急”がちょうど良いところですね。
わたしはもともと愛知の田舎出身で、竜太郎と結婚してかれこれ10年以上たちますが、都会で生まれ育った彼とは暮らしのペースが全然違うんです。
出会いの場所である東京、そしてサーフィンをきっかけに移り住んだ千葉でもずっと、目まぐるしい都会の時間軸で物事をこなしていたように思います。わたしはその中でどこか緊張を手放せない感覚でした。でも、高鍋に来てからはよりお互いリラックスした状態で毎日を楽しめているような気がします。
竜太郎さん:それに加えて僕が惹かれているのは、高鍋の人たちがもつ絶妙な“ゆるさ”です。田舎っぽいわけではなく、かといって都会のように詰まりすぎてもいない。表情も、服装も、言葉も、車の運転も、すべて“力が抜けている”というか。この感覚も東京や千葉では味わったことがありません。

高鍋に、柔らかな新風を吹き込む。

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― 竜太郎さんは移住してまもなく、ブラジリアン柔術の道場『カルペディエム 高鍋』を開かれましたね。もともとご計画にあったのでしょうか?

竜太郎さん:いいえ、特に考えてはいませんでした。
当初はブラジリアン柔術の動きをフィットネスに応用したワークショップを県内各地で行っていたのですが、参加者から「本格的に学んでみたい」という声があり、知り合いの取り計らいで高鍋西中学校武道場をお借りして柔術クラブを始めたんです。といっても学校なので活動時間が夜間に限定されるのがもどかしく、いっそ常設道場を開いてみようと思い立ちました。「いいね! やっちゃいなよ!」と周囲から背中を押されて僕もすっかり調子に乗り(笑)、物件探しから内装・設備まで友人の手厚いサポートを受け、完成に漕ぎ着けました。

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〔内装の至るところに、竜太郎さんと友人たちのこだわりのDIYポイントが散りばめられている。〕

竜太郎さん:オープンから着実に会員数も増え、その半数以上は女性。中には70代もいらっしゃいます。殴る蹴るの動作がなく、効率的な体の使い方や身のこなしを技として習得してゆくため、年齢・性別関係なく、安全に取り組めるのが魅力です。
瑞季さん: 竜太郎に連れ添っていながら私自身はこれまで柔術の経験は一度もなかったのですが、高鍋に来てはじめて「挑戦してみよう」という気持ちが湧いてきて、今では一緒に練習しています。道場で汗を流す皆さんの表情があまりに生き生きしていて、それに感化されましたね。高鍋での楽しい毎日も、新しいことに向かう前向きなエネルギーをくれたように思います。
竜太郎さん:ブラジリアン柔術は何より人の“心の在りよう”を変えてくれるもの。僕も、柔術を始めて30kgの減量に成功しただけでなく、強さを身につけるごとに心も穏やかになっていきました。
体力づくり、ダイエット、息抜きなど、いろんな目的があっていいと思います。肩書やプライドを捨て、夢中で組み合って、楽しみながらそれぞれの成果を見つけていただければこんなにうれしいことはありません。この道場が、高鍋で暮らす皆さんの日常に加わる“スパイス”になればいいですね。

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海のそばの隠れ家に、2人と4匹暮らし。

― お住まいはどうやって探されましたか? とても素敵な場所ですね。

瑞季さん:うちは犬が3匹いるので、思い切り野山を走らせてあげたくて、はじめは山の方にある家を探していました。地図アプリで「人里離れた一軒家」を探して実際に足を運ぶ日々がしばらく続き、1ヶ月で100軒近く回ったと思います。道中で脱輪して近所のおじさんに引っ張り上げてもらったり、訪ねた先でおばあさんと仲良くなって晩ごはんをご馳走になったり⋯エピソードには事欠きません(笑)

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竜太郎さん:妻が熱心に探してくれている一方で、僕がサーフィン仲間に紹介してもらった空き家が今の住まいでした。林の中に佇む隠れ家のような家で、砂浜まで数十メートルの距離。長年人が住んでいなかったようで壁や雨どいは崩れていましたが、それでも僕はその姿に一目惚れしてしまいました。
瑞季さん:ずっと“山の家”を探してきたので、私は最初ピンときていませんでした。でも、眼前に広がる砂浜をうちの犬たちが大喜びで走り回っているのを見て、すぐに心が固まりました。

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〔家を囲む防風林の中には砂浜へ続く波田野家専用の小道があり、毎日ここを通って海に出る。〕

竜太郎さん:今は妻や友人たちとコツコツ家を修理したり、改築したりしながら、僕ららしい住まいをつくり上げているところです。
集めた薪で火をおこして調理したり、囲炉裏を設置して暖をとったり、自給自足とまではいかなくても“衣食住”を自力で生み出していければかっこいいなと以前から考えていたので、憧れの生活に近づいた気がします。

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竜太郎さん:新しいライフスタイルを求めて旅に出て、先のことも決めないままに今に至りました。子どもがいたり、どうしても手放せないものがあったりすると、僕らのような選択はできないかもしれない。なかなか破天荒ですからね(笑)
でも間違いなく言えるのは、これからセカンドライフを楽しもうとする人たちにとって、高鍋はぴったりの場所だということ。いつか誰かが人生の節目を迎えた時、僕らのストーリーが一歩踏み出すきっかけになればうれしいですね。

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