移住者紹介
IMMIGRANT
まちの人がつなぐ、思いやりの連鎖。地域に守られた子育て。
加藤 彰浩さん・静香さん
これまで転勤続きで各地を転々としてきた加藤さんが高鍋町に腰を落ち着けたのは、2015年のこと。ご主人・彰浩さんが、となり町にある航空自衛隊新田原基地で勤務することが決まったのがきっかけでした。
当時新築だった戸建のご自宅は、今もピカピカ。一見すると何も変わりません。
しかし、子どもたちの成長と、ご夫婦の話しぶり、そして言葉の端々に混じる方言が、すっかり高鍋のまちに溶け込んだご家族の暮らしを教えてくれているようです。
この日はご夫婦と、3人のお子さん、そして5年前には会えなかった新しい家族・犬のらんまる君が迎えてくれました。
躊躇なく手を差し伸べるのが当たりまえ。ごく自然に優しさが循環していく。
― “高鍋町民”となって5年経ちますが、このまちへのイメージに何か変化はありましたか。
彰浩さん : う〜ん。なんだろう…
静香さん : もう慣れ切っちゃって、全然出てこないね(笑)
― もうすっかり落ち着かれているみたいで何よりです。
5年前のインタビューでは、高鍋の好印象な点として「人の温かさ」をいの一番に挙げていただきましたが、今もそれは変わりませんか。
彰浩さん : それは変わりません。実際、いつもすごく助けられています。
静香さん : 私がどうしても都合がつかず、子どもの習い事などの送迎ができなくなった時、「じゃあ私行くよ」って、知り合いのお母さんがすぐに声を掛けてくれるんです。
これは長女の話ですが、以前、家の鍵を持たずに外出して帰宅すると誰もおらず困っていた時、それを見かけた同級生がパンと飲み物を買ってきてくれたと言っていました。
みんなが躊躇なく手を差し伸べてくれるところがすごいなあと思いますし、おのずと私たちも相手が困っている時には「助けてあげたい」という気持ちになります。そうやって、“良い循環”が生まれるのでしょうね。
彰浩さん : それと、他(の地域)では無かったここならではの特徴が、道ですれ違った時の「あいさつ」。
絶対と言っていいほど、皆あいさつを欠かしませんね。
静香さん : 小学生ぐらいまでは、まあ普通かなとも思うんですけど、お年頃になってくるとだんだん減ってくるものじゃないですか。ここでは高校生でもあいさつしてくれますから。こちらがちょっとびっくりするぐらいハツラツと、「こんにちは!」って(笑)
彰浩さん : それぐらい“お互いの顔が見える環境”だといいますか。地域全体でお互いを見守る土壌ができているのかなと思います。
静香さん : 子どもたちに関しては特に、「見守り隊」もありますしね。地域の、主に年配の方が、ボランティアで登校に途中まで同行してくれるんですよ。「子育て世代は朝忙しいから」と。本当にありがたいです。地域で子どもを見守ってくれている、という安心感はありますね。
それに「登校班」っていって、小学生が地区ごとに集団で登校するしくみも、私はすごく好きなんです。引っ越してきた当時は、「何それ?」って感じだったんですが。
― 「登校班」に限らず、このまちならではのしくみも多かったと思うのですが、勝手がわからず困惑したことはなかったですか。
彰浩さん : 右も左もわからず途方に暮れる、なんてことは一度もなかったですね。自治会長さんから連絡をいただくなど、いつも先方から何かしらアプローチがありましたから。
静香さん : 学校の先生や役場の方が事前に話を通してくださっていたこともあり、皆さんすごく丁寧に迎えてくださいました。
彰浩さん : 僕は特に地区の消防団の方に良くしてもらっていますね。僕自身は自衛官なので所属はできないのですが、地区のお祭りの裏方仕事なんかに合流すると、だいたい終わってから飲みに連れて行ってもらえます(笑)
静香さん : そうそう。「財布も持たずに出かけたのに」ってこともあって心配するけど、いつも良い気分になって帰ってきますよ!
― 高鍋町って、お祭りがとても多いですよね。
静香さん : 地区ごとに催されますからね。盆踊りしたりお神輿かついだりさせてもらって、子どもたちも満喫できているみたい。
静香さん : そもそも、地区や学校単位での活動が盛んですよ。子供会でやる「ドッチビー大会」とか、PTAの学年ごとでバレー大会とか。6年生になると保護者主体で開くレクリエーションがありますよ。長女の時は1泊2日のキャンプで、長男の時はバーベキューとレクリエーションでした。
彰浩さん : バーベキューのお肉が、これまたおいしいんですよ!
静香さん : そうそう、ここで手に入るお肉やお野菜のおいしさは、間違いないですね。おかげ様でちっとも痩せやしない(笑)! しかも手頃に買えるからさらに驚きですよ。
― 食べ物は手頃さとおいしさは、皆さんおっしゃいますよね。
他に「これは良い!」と思うところは?
静香さん : 私たち、高鍋に定住する以前は石川県に住んでいたんです。北陸の日本海側、“冬は晴れなし” の石川県から来たからこそ余計にありがたく感じるのかも知れないけど、宮崎は冬でも雪は降らないし、基本的にずっと快晴じゃないですか。それがすごくうれしくて。雪かきの労力が不要な上に、冬でも外で布団が干せることに、とにかく感動しましたね。夏は言わずもがなですよ。洗濯物なんて、朝に干して、追加の洗濯物を洗ってまた干しに出たら、もう乾いているんですから。
強烈な日差しに恐れをなして最初の年は引きこもっていましたけど(笑)、今はすっかり慣れましたね。
「ありすぎる」とせわしない。日々を丁寧に過ごすなら、「なんもない」がむしろ心地よい。
― このまちの魅力を語っていただきましたが、結局のところ、高鍋町のどんなところが一番移住者の皆さんの心に刺さっているのでしょうか?
静香さん : 都会志向の人なら、地方での暮らしは少し苦しいかも知れない。けれど、喧騒から離れて丁寧に日常を過ごしたいという人には、とにかく住みやすいところですよ。
彰浩さん : 山も海も近いし、サーフィンもできるし、休日にアウトドアを楽しむ僕たちみたいな人なら天国じゃないでしょうか。
静香さん : 買い物も通勤・通学も病院も不自由したことは無いですし、お店もたくさん無いなら無いで、家族のお出掛けがそのぶん特別なイベントになります。庭で季節の野菜や好きな果物を育てて自分たちで収穫するのも、高鍋に来てから見つけた楽しみの一つ。私も大好きなイチジクを植えて楽しんでいます。
― 家族の時間を大切にしながら、丁寧に日々を過ごすなら、ぴったりの場所なのですね。
お二人とも、今日は貴重なお話をありがとうございました。
彰浩さん・静香さん : ありがとうございました。