移住者紹介

IMMIGRANT

高鍋で“なりたかった自分”への扉を開く。

高鍋駅前写真館KUU

久東 裕次さん

福岡で会社員として勤務していた久東さんが、カメラと出会ったのは40代半ばのこと。その4年後、人の縁に導かれて行き着いたこの高鍋町で、フォトスタジオをオープンしました。「自分でも予想外の展開」と話す久東さんの人生は、移住をきっかけにどのように変化したのでしょうか。

― 高鍋町に移住されたのはどのようなきっかけで?

その経緯をお話しすると、あまりに目まぐるしくて驚かれるかもしれません(笑)。
仕事の都合で各地を転々としていましたが、移住以前は久留米市に住んでおり、製麺会社の工場に勤務していました。
ふと「新しい趣味を持ちたい」と思い、カメラを購入したのはつい4年前のこと。はじめは動画撮影に挑戦してみたのですがどうもうまくいかず、試しにポートレート(人物)撮影をしてみたところすごくしっくりきまして。「これだ!」と確信してからはどんどんのめり込み、写真家が開くプロカメラマン養成講座を受講してその心得を学んでゆきました。

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私が「最初の師匠」と仰ぐその写真家はコミュニティも運営しており、全国津々浦々のカメラマンが参加していました。その中に宮崎在住の方もいらっしゃって、オンラインで交流はあったものの直接お話ししたことはなかったため、ある日「僕から会いに行ってみよう」と思い立ったんです。
そうして一人で宮崎を訪れた際に、その方の行きつけとして紹介していただいたのが高鍋町にある『カレーカフェ靜(しずか)』でした。

― カフェを訪れたことが、移住を検討するきっかけに?

そうです。この『カレーカフェ靜(以下:カフェ靜)』はただのカフェではなく、アート作品や写真の展示を行ったり、音楽ライブを開催したりできるアトリエを併設しており、宮崎県内各地からクリエイターやアーティストなどが集まり、クリエイティブを楽しむ場でもあったんです。
それぞれが能力を発揮し、驚くほどスムーズに企画が生み出され、次々と形になっていく様子を目の当たりにした僕は、感銘を受けると同時に自然とそのコミュニティに引き寄せられていきました。他所から来て、まったく知り合いのいない僕を初日から温かく迎え入れてくれたことも理由の一つです。
平日はサラリーマンとして働き、週末のみカメラマンとして活動しようと試みたのですがなかなかうまくいかず、「このまま福岡で活動するのがベストなのか」と迷っていたタイミングであったこともあり、思い切って高鍋町に拠点を移すことに決めました。

― フォトスタジオをオープンすることも、移住の目的の一つだったのですか?

いいえ、正直なところそれはまったく。当分は出張撮影カメラマンとして活動していくつもりでした。
しかし高鍋で暮らし始めて3〜4ヶ月経った頃、「高鍋駅のすぐ近くに空き家があるらしいんだけど、どう?」というお話をいただき、「そうだ、ここを僕のフォトスタジオにしよう」と思いついたのです。

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〔友人らの協力を得つつ、古い和室から白を基調としたきれいなスタジオへ、DIYで改装を施した。味のある看板も、もちろん手作り。「高鍋在住の友人の子どもに描いてもらいました。僕が可愛がっている“一番弟子”(笑)です。」〕

― すごくスピーディーな決断ですね。

たまたま良い立地の物件に巡り会えたので、これはまたとないチャンスだとピンときたんです。
でも、以前の僕なら考えられないほど迅速な決断だったことは間違いありません。やりたいことはたくさん思い浮かぶけれども、なかなか行動に移せない。カメラと出会ってからも、受け身になって学ぶばかりでなかなか自分を変えることができませんでした。
でも高鍋を初めて訪れたあたりから、「自分から動き出そう」と本気で思えるようになったんです。自分でも驚くほど、突然の変化でした。
カフェ靜で出会ったコミュニティも、僕の生き方を大きく変えてくれました。皆さんの実行力はとてつもなく、うかうかしていたら置いていかれるほどのスピードで物事が進んでゆきます。そんな環境に身を置いたからこそ、今の僕が育ったといえると思います。

― 何よりも自分自身が大きく変わったのですね。
 その他にも、高鍋町に来てから変化を実感したことはありますか?

「人のためになることをやりたい」と思えるようになったことでしょうか。
高鍋町の海水浴場・蚊口浜の美化活動にボランティアで取り組まれている方と知り合いまして。2年間にわたり毎日お一人でゴミを拾っているというお話を聞き、僕は「大勢を巻き込んでレクリエーション感覚で楽しめば、一人では得られないような喜びを味わい、もっと大きなことを成し遂げられるのではないか」と思ったのです。
そのアイディアを提案したところ賛同してくださり、みんなで蚊口浜美化活動を行うことになりました。これから月に1回を目標に続けていく予定です。
以前は、気恥ずかしさや「偽善と思われるのではないか」という不安でこういった活動からは距離を置いていましたが、その方のおかげで僕自身も殻を破ることができました。

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〔1時間はゴミ拾い、その後の1時間はのびのびと浜で楽しい時間を過ごす。初回の「蚊口浜美化活動」には、写真に写っていない参加者を含め、30人余りが参加した。その約半数は子どもたちだった。〕

― 美化活動には子どもたちも参加したんですね。

そう、子どもたちにも積極的に参加を呼びかけたんです。
高鍋に移住してからというもの、地域の子どもたちと関わる機会が格段に増えました。僕が写真の撮り方を教えてあげることもあり、かねがね抱いていた「子どもに写真の面白さを伝える活動がしたい」という想いがやっと実現した形です。
しかしそれ以上の収穫として、純粋な彼らならではの視点や考え方に、僕自身が影響を受けることも多いと気づきました。
大人と子どもが一緒に活動し、学び合える。そんな環境づくりに貢献していくことが目標の一つです。

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〔子どもに撮影を教える久東さん。「くーさん」と呼び慕ってくれる子どもたちと向き合う時間も楽しみの一つ。〕

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〔時には公園で子どもたちと全力で体を動かす。〕

― 久東さんが今後どんなことを実現されていくのか、とても楽しみにしています。
 最後に移住の先輩として、移住検討中の方に伝えたいことがあればお願いします。

たくさんの仲間に出会えますよ、この一言でしょうか。
高鍋は“人が集まる場所”、つまり、“人との縁がある場所”だと僕は思います。
僕自身予想もしていませんでしたが、この町はとても移住者が多いんですよ。
私を導いてくれたカフェ靜の奥様も移住経験があるそうで、困りごとを抱えた移住者には優しく手を差し伸べてくださいます。
これまで人とのご縁にたくさん助けられてきたからこそ、今後は僕自身が主体となり、人が集まり、繋がることができる場を提供できたらいいなと思います。
ですから皆さんぜひ一度、高鍋を訪れてみてください。

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